浴室づくり基礎講座
第4回 "誰にでも優しい"が快適設計の条件
“広さ”より“安全性”を優先しよう

004-01.jpg   暦のうえでは立春を過ぎましたが、寒さはこれからが本番です。それだけに、温かいお風呂が本当にありがたいと感じる季節です。そこで、今回は安全で快適なバスルームの基本的な条件について考えてみたいと思います。
 最初に、広さの問題から考えてみましょう。住まいというと、誰でもつい広さに目が行きやすいからです。
 いうまでもなく、マイホームはリビングルームやダイニングコーナーあるいは寝室など、どの部屋もゆとりある広さを確保している方が快適です。現代の住まいでは、広いことが最大の贅沢なのです。このため、バスルームも広いほうが快適だと考えがちですが、バスルームに限れば必要以上に広いスペースはいらないと思います。たしかに、一緒に入らなければならない小さな子供がいたり、介助が必要な家族が同居している家庭なら、それなりの広さを準備しなければなりません。しかし、ごく普通の家庭の場合なら、畳2枚分程度のスペースが確保されていれば十分で、そうした心配をするより、使い勝手のよさ・安全性に配慮して設計すべきだと思います。快適なバスルームとは広さが大切なのではなく、どのように設計されているかということです。
 使い勝手がよく、安全なバスルームの基本条件とは、滑りにくく掃除がしやすい清潔な洗い場、出入りがしやすい浴槽、楽な姿勢で使える洗面器置場と水栓設備、十分な明るさの照明と適度な換気、そして高齢者や子供だけでなく誰にでも優しい手すりなどが設置されている、などということを知っておいてください。
01 Guard
温度差が最大のバリアです
004-02.jpg 冷え込みがきつい季節に入浴するとき一番気になるのは、バスルームの寒さではないでしょうか。住まいの最大のバリアは温度差だといわれるくらいで、健康に自信がある人でも、衣服を脱いで冷え切った浴室に入るのはつらいものです。しかも、裸になった瞬間に寒さで血圧は急上昇し、その状態で湯につかると熱さのショックで一時血圧が上がり、血管が開くと今度は急激に下がります。この血圧の急激な上昇とそれに次ぐ急降下が、高齢者や心臓の弱い人の大敵になります。もちろん、健康だと思っている人にも決して体によいわけがありません。

 こうした対策として、最近は空調設備を備えたバスルームが普通の住宅でも増えてきました。入浴前にあらかじめ部屋を暖めておけば、リビングルームなど暖かな部屋との温度差が少なくなるからです。単に暖房するだけではなく、衣類乾燥、換気、さらに夏場に爽快な涼風をといった複数の機能を備えた、後付けが簡単な商品も多く出ています。最寄りのショールームなどで確認してください。
 なお、こうした設備がないときは、入る前に熱いシャワーを浴室内にまんべんなくかけて空気を暖めるだけでも効果があることを知っておきましょう。
02 Relax
ストレス解消に効果的な半身浴
004-03.gif  ここで、入浴時の注意点を……。肩こりには、40~42℃ほどの温かさを感じるお湯での全身欲が効果的だといわれていますが、つかっているのは5分程度が目安です。あまり熱い湯での長湯は、お勧めできません。
 ストレスを解消し、リラックスしてよく眠れるようにするには、38~39℃の半身浴が効果的だといわれています。みぞおちまでつかる半身浴なら、体の深部体温をあまり上昇せずに足先や手先など冷えやすい部分の血行をよくしながら、無理なく長時間入浴できるからです。ただ、お湯から出ている部分の水分を拭きとって、室温を25℃以上に保つようにしましょう。あまり寒いときは、肩にタオルをかけるとよいでしょう。とはいっても長すぎるのは禁物で、つかっている時間は20~30分が目途です。
03 Bath
浴槽は浅め、エプロンはまたぎやすい高さ
004-04.jpg  バスルームの主役は浴槽です。この浴槽には、コンパクトながら肩までしっかりつかれる深さの和風、足を伸ばしてリラックスしてつかれる洋風、肩までつかれてしかも適度に足が伸ばせる和洋折衷の3タイプがあります。どのタイプを選ぶかは好みですが、小さな子供でも高齢者でも、誰でもが使いやすいというのが選ぶときの最大のポイントです。
 つまり、家族が揃って入浴を楽しめるワイドな浴槽にしたい、心地よい刺激の気泡が楽しめる浴槽にしたい、といったサイズや機能は家族構成と好みで決めてください。
 ただ、いくらゆったり入浴できるからといっても、大きすぎると子供や高齢者は浴槽内で体が滑ってしまう心配があります。このため、一般的には足が前方の浴槽壁にあたり、体を支えることができる寸法が適しているといわれています。身長により適性寸法は異なりますが、幅600mm、長さ950~1,200mm程度あれば、ゆったりした気分で入浴できますし、しかも安全面でも心配ないと思います。このあたりを目安にしてください。
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004-07.gif 浴槽の深さは、もちろん和風なのか洋風なのかで異なります。ただ、首までどっぷりつかりたいとの想いから深めを好む人が多いようですが、出入りのしやすさ、浴槽内での体のバランスを崩したときの安全性を考えると500~550mmと浅めに感じる程度がよいでしょう。

 快適性、安全性を考えると、浴槽エプロンの高さも大切な設計ポイントです。高すぎると入浴時に足を大きく上げなければならないのでバランスを崩す心配がありますし、逆に低すぎるとエプロンを越えるのは楽ですが、浴槽の底に足を置いたとき片方の足を曲げなければなりませんから、これも不自然な姿勢になり危険が伴います。つまり、洗い場の床と浴槽の底の高さが大きく違うと動作が不安定になるわけですから感心できません。こうしたことに配慮して、エプロンの高さは400mm程度が一般的に多いようですが、350~450mmならまず安全圏だと考えてください。

 この他、浴槽をまたぐとき、腰を下ろしたり立ち上がるとき、入浴中の体の安定を保つために便利な手すりを設置したり、入出浴するときに楽な腰掛けスペースを設るなど、こまかな配慮もしておきたいものです。

資料提供:ハウジング企画 社記事:オフィス サード アベニュー 斉藤良介

※2004年に掲載されたものを転記しています。


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