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~原状回復の費用負担等を、イラストで部位別に紹介~
第27回 賃貸住宅紛争防止で"都版ガイドライン"
不動産業者に義務付けられた書面での説明


027-01.jpg 「東京都における住宅の賃貸借に係る紛争防止に関する条例(=賃貸住宅紛争防止条例)」が10月1日に施行されました。 東京都は、この新条例をより効果的に普及させるため、イラストや一覧表などを用いた分かりやすい 東京都版"賃貸住宅トラブル防止ガイドライン"を作成、都庁や消費生活総合センターなどで配布しています。

 東京には現在、約500万世帯が居住していますが、そのうち4割にあたる約205万世帯が民間賃貸住宅に居住しています。 大都市ならではの人口の流動化が高い東京では、民間賃貸住宅は重要な地位を占めているわけです。ところが、民間賃貸住宅では 退去時の敷金精算や管理など様々なトラブルが多発、東京都消費者生活総合センターなどへの相談件数が急増しています。 賃貸住宅紛争防止条例は、こうした賃貸借上のトラブルを未然に防止するために、あらかじめ明らかにすべき事項を定めたものです。 前号でその内容を紹介していますが、主なポイントを復習してみましょう。

 この条例では、賃貸住宅を仲介する宅地建物取引業者は借り主に対して、退去時の原状回復と入居中の修繕費用の負担についての 法律上の原則や判例により定着した考え方を、書面を交付して説明することを義務付けています。主な説明事項は、退去時の 通常損耗等の復旧は貸し主が行うことが基本であること、入居期間中の必要な修繕は貸し主が行うことが基本であること、 賃貸借契約の中で借り主の負担となる具体的な事項、修繕及び維持管理等に関する連絡先の4点です。また、宅地建物取引業者が この説明義務等に違反したときは、知事は指導・勧告し、それでも従わないときは氏名を公表できるなど、実効性を高める罰則も 定められています。

 適用対象は、10月1日以降に宅地建物取引業者が重要事項説明を行う、東京都内にある居住用の賃貸住宅ですから、 店舗や事務所など事業用や貸し主と直接契約を結ぶ住宅は含まれません。
退去時に必要な原状回復、ただし通常損耗は貸し主負担

027-02.jpg このほど作成された東京都版"賃貸住宅トラブル防止ガイドライン"の主な内容は、次の通りです。

 まず、退去時の復旧では、(1)借り主の故意・過失や通常の使用方法に反する使用など、借り主の責任で生じた住宅の損耗や キズ等の原状復旧費用は借り主負担が原則、(2)経年変化や通常の使用による損耗・キズ等の復旧費用は貸し主負担が原則、 (3)双方の合意で原則と異なる特約を定めることができるが、通常の原状回復義務を超えた負担を借り主に課す特約はすべて 認められるわけではなく、内容によっては無効になることがある、の3点です。

 例えば、壁に貼ったポスターや絵画の跡、家具の設置によるカーペットのへこみ、日照等による畳やクロスの変色など 通常損耗・経年変化は家賃に含まれるとして貸し主負担が原則です。これに対して、タバコによる畳の焼け焦げ、 引っ越し作業で生じた引っ掻きキズ、借り主が結露を放置したために拡大したシミやカビなど借り主の責任で生じた汚れやキズ、 故障や不具合を放置したために拡大した汚れやキズの原状回復費用負担は借り主の義務となります。注意を払って使用していれば 防ぐことができた、つまり善良なる管理者の注意義務(=善管注意義務)に違反していると考えられるからです。

 ただし、次の入居者を確保する目的で行う設備の交換や化粧直しなどのリフォーム、古くなった設備を最新のものに 取り替えるといったグレードアップは原状回復ではありませんから、貸し主の負担です。借り主の故意・過失による負担範囲は、 被損部分の補修工事に必要な施工の最少単位に限定しているからです。

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補修は最少単位、クロス張り替えは経過年数を考慮

 借り主の負担割合をもう少し具体的に考えてみましょう。

 原状回復とは、「借り主の責任によって生じた損耗・キズ等の被損部分をもとの状態に戻すこと」ですから、 費用負担についても被損部分の補修工事に必要な施工の最少単位に限定されます。例えば、クロスの一部を借り主の不注意で 破いてしまった場合は、破損した部分のクロスの張り替え費用は借り主の負担となりますが、破損部分もやはり 通常損耗・経過変化しているのでその部分の経費は貸し主負担となり、借り主は補修費用からその部分を差し引いた額を負担すれば よいわけです。

 クロスを破損した場合の借り主の負担は、m2単位が原則です。しかし、破損部分だけを修理すると張り替えなかった古い部分と 色が異なってしまうことがあります。この場合は、クロス1面分の張り替え費用が借り主の費用負担になりますが、経過年数を 考慮して通常損耗・経過変化分を差し引いた額が借り主負担です。また、色合わせのために部屋全体の張り替えを行うときは、 破損していない残りの面の張り替え費用も貸し主の負担になります。

なお、負担単位は可能な限り毀損等の部分に限定したもので、補修工事の施工が可能な最少単位が基本です。

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入居中の小規模修繕は、特約で借り主負担が可能

027-05.jpg  入居中の修繕では、

(1)貸し主には、借り主がその住宅を使用し居住していくうえで必要な修繕を行う義務があるが、 借り主の故意・過失、通常の使用方法に反する使用など借り主の責任によって必要となった修繕は借り主負担、

(2)小規模修繕は貸し主の修繕義務を免除したり、借り主が自ら費用負担で行うことができるという特約が定められる、

というのがポイントです。

 つまり、貸し主は借り主が住宅を使用し、生活していくうえで必要な修繕を行う義務を負わなければなりません。 ただし、家賃が著しく低額にもかかわらず修繕に多額な費用がかかるときは、例外的に貸し主の修繕義務が免除されることも あります。また、借り主の故意・過失、通常の使用方法に反する使用で生じたキズや建具の不具合は、借り主が費用を負担して 修繕するということです。

 小規模修繕の特約とは、電球や蛍光灯、給水栓、排水栓の取り替えなどを貸し主の承諾なしで修繕できる権利を与えたものですが、 借り主が修繕義務を負うわけではありません。したがって、この特約を理由に退去時の原状回復費用としてその費用を貸し主に 請求することはできません。

 このように都版ガイドラインは、具体的な事例がイラストや表で分かりやすく紹介されています。しかし、トラブル防止で 一番大切なことは、賃貸借契約の事前説明を納得するまで確認することです。特に、特約はトラブルの原因になることが多いので 注意が必要です。入居当初にキズや汚れを双方で確認しておくことも忘れないでください。

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写真提供:ハウジング企画社/記事:オフィスサードアベニュー 斉藤良介
※2004年11月に掲載されたものを転記しています。


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