~狭ければ狭いなりに造りようがある『庭』~
第29回 緑を楽しむスモールガーデン
大事なことは“庭”と“建物”との調和


029-01.jpg  敷地が狭いという理由だけで、庭を諦めてはいませんか。実は、庭は広ければ広いなりに、狭ければ狭いなりに造りようが あります。昔から「坪庭」という言葉があるように、1坪の広さでも十分に庭は造れるものなのです。そこで今回は、狭小地でも こんなに素敵なお庭が完成した3軒のお住まいを紹介します。

 写真を見てもお分かりのように、狭い敷地では特に建物との調和が大事です。あなたのご近所に、建物と庭がどうも調和が とれていないと感じられる家がありませんか。住まいづくりでは、まず建物ができ、次に門と塀で囲い、それから庭造りというのが 基本的な順序です。そして、それぞれが相手のデザインを尊重しあい、上手く調和してはじめて美しい住まいとなります。 いうまでもなく、プロに全面的に任せてもOKですが、それぞれの現場に応じて臨機応変に自分の好みを取り入れ、 建物にマッチした自分流の庭を造ることは可能です。

 ただ注意したいのは、庭のできあがりもさることながら、後々の維持・管理にも気を配るということです。 マツなど手間のかかる木を多く入れると手入れのための経費が大変ですし、芝生も常に美しく、青々と保つためには除草や芝刈りが 欠かせません。ここで紹介するお庭は、狭いながら個性を主張し、しかも日常の管理が比較的簡単な好事例です。あなたの庭造りの 参考にしてください。
ススキと野草で構成した野趣あふれる小庭

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 西洋風の華やかなガーデニングばかりに目が行きがちですが、実は今、若い世代で盆栽や日本の野生種の草花などをアレンジした 純和風のしつらえが静かなブームを呼んでいます。なにかと騒がしい世の中だからこそ、地味ながらも凛とした美しさにホッとする 心の安らぎを求めているのかもしれません。

 このお庭は約13m2(4坪)と狭いうえ、建物北側の日陰地ですから決して恵まれたスペースではありません。 ただ、こうした条件だからこそススキや和風の宿根草をたくさん植え込み、忘れかけていた野原の風景を再現した枯れたイメージの 小庭が出来あがったのだと思います。

 立木は落葉樹のナツハゼ1本だけで、約30株のススキをはじめスミレ、セキシュウ、ヒメシャガ、タブラン、シダ、アヤメ、 ギボウシなど20種類もの野草が控えめな美しさをみせています。ススキの穂が出そろった秋、野草の花々が咲く春、そして水鉢に 寄り沿うアヤメの初夏というように、四季折々に情緒豊かな風情を楽しませてくれます。

 しかも、御影石の延べ段、本丹波石の飛び石、古びた杭火石の山灯籠、御影石の石臼、屋久島焼きの水鉢などが、侘びた雰囲気を 一層演出してくれます。駐車場の奥にあるわずか13m2の小庭ですが、季節によって表情を変える心安らぐ空間です。
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ヤマザクラの株立ちをシンボルツリーにした開放的な前庭

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「気に入っている火鉢を利用して、建物とバランスのとれた前庭にしたい」というオーナーの希望を見事に具現化した好例です。

 玄関に接するこの前庭の最大の特徴は、道路側からも内部がうかがえるようになっているので、道行く人たちにも楽しんで もらえる庭造りを心がけたことです。まず、道路側はアサビやヒサカキを混植して、自然の雰囲気を感じさせる低い生け垣に しました。シンボルツリーはヤマザクラの株立ちですが、そのまわりにはシャクナゲやトサミズキなどの花木を植えて季節が 感じられるように配慮しています。また、直線的で硬いイメージの門まわりにはオオキンシバイやカンチクで雰囲気を和らげて います。

 オーナーのたっての希望だった想い出の火鉢は、ポイント景として白川石敷きの中に取り入れ、水鉢に再利用しました。 花木や下草の中心に埋め込まれた青い水鉢は、効果的な添景になりました。
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緑の濃淡が建物に映える、すがすがしくさわやかな森

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 周囲を建物で囲まれた狭小スペースを緑で彩る場合は、西洋風の草花をプランターやポットで色鮮やかに飾り立てるのが 一般的な手法です。ところが、このお住まいではあえて雑木や下草の緑の濃淡でコーディネートしました。それが建物のデザインに 上手に映え、すがすがしい小さな森のように仕上がっています。

 建物南側の細長いスペースには枕木を敷きつめ、土や砂利とは異なる風合いを醸し出しています。 ここにはモミジとソロの株立ちを植え、その根元は緑鮮やかなヤブコウジです。モミジは、山に生えている様を感じさせる 株立ちを選びました。新緑のころの青葉や紅葉が彩りを添えますが、夏には日差しを遮って、やさしい木陰をつくってくれるし、 落葉した冬は室内に光を採り入れてくれます。また、新緑が印象的なソロですが、実は落葉後の華奢な枝ぶりも見事です。

 これらの雑木は、下から見上げると光を通した葉が透き通るような鮮やかな色ですが、さらに2階からの眺めにひと味違った 趣があります。緑の色合いで季節の移り変わりが感じられる小庭です。

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写真提供:ハウジング企画社/記事:オフィスサードアベニュー 斉藤良介
※2004年11月に掲載されたものを転記しています。


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